皆さま、おはようございます。
4月から新社会人の皆さま、会社でのお仕事に慣れてきましたでしょうか。
新入社員研修などを実施している会社様も多いと思います。
法務部はもちろん、他部署でも、法律知識ではなく「証拠」についての考え方を学んでおくことは有用です。
トラブルのご相談の際に「証拠もあります」として提示いただく物が、証拠としては弱いことも少なくありません。
裁判所は、「分かり易い」「安心感のある」証拠を好みます。
また、会社は組織ですから、会社内で役割分担があります。
強い組織を作る上では、各部署の「役割」を果たすことが重要です。
そして、各部署間の健全な協力関係の構築も需要になります。
今回は、(新入)社内研修のイメージをご理解いただくため、触りのお話をしようと思います。
(1) 契約書の内容
①領収書の印は担当者印でも社判でもいいですが、契約書に捺印するときには代表印を押しましょう。
領収書は意思表示をするものではありません(報告文書)が、契約書は意思表示など法律行為内容を示すもの(処分文書)です。
会社を代表して意思表示できる者及び要件(単独で可能か等)は、法律で定まっております。
通常、株式会社の場合には代表取締役です(会社法349条1項)。複数の代表取締役がいる場合でも、単独で意思表示できるのが基本です(会社法349条2項)。
代表取締役であるか否かは、法務局で商業登記を取り寄せることで分かります。対外的証明が不要な社内確認の場合には、インターネットで閲覧できる有償サービス(登記情報提供サービス)があり、これで足りることが多いと思います。弁護士は殆どの人が登録していると思います。
社内確認に止まらず契約書など対外取引の場合には、名刺あるいは会社ホームページに「代表取締役」と記載されていたというだけでは、仮に登記上の代表取締役ではなかった(=法律上は「代表取締役」ではなかった)とき、会社の意思表示の効力(有効性)が法律上問題となります(いわゆる「表見代表取締役」という問題です。)。
何か特殊な事情があるなど心配若しくは違和感がある場合には、弁護士にご相談ください。
会社間の契約では、私の経験上、M&Aなどの大規模取引や取引基本契約(継続的契約)が多い印象を持っています。
取引基本契約の場合には、個別契約に適用されるルールなどを定めるので、重要度が高いです。
しかし、経験上、相談時にご持参いただく従前の契約書記載内容と実態が乖離していることが珍しくありません。
以前に弁護士先生に作成してもらう際に、余り拘っていなかったということが多いようです。
運用していく上で変化に対応していくことは重要です。
ですが、契約書を作成する段階から、後の変化を想定して、①契約書にどこまで記載するのか、②契約書ではなく運用書、仕様書などに落とすにしても、そこでの記載の程度につきましては、経験豊富な弁護士に相談して助言をいただくと良いと思います。
(2) 契約書の体裁
契約書作成において検討すべきは、条項「内容」だけではありません。
契約書作成において、確かに、契約書に盛り込む内容、つまり契約で拘束したい内容及び手続ルールの明記が最も重要です。
トラブル解決の指針、あるいは裁判証拠になるからです。
加えて、当事務所では、ご依頼者様の対象取引の規模及び背景、契約書の用途(単発契約書か雛形利用か等)、並びに会社カラーなどを考慮し、契約書全体の「印象」も重視しております。
ご依頼者様が同種契約で繰り返し使う書類(雛形利用)であれば、「手続ルールの明記」の部分が重要になってきます。
平常時にも、「契約上、どうなっていたかな?」と後に契約書内容を確認することが多いからです。
雛形利用であれば、バージョン更新が想定されるため、どのバージョンか否かも分かる工夫をします。
ボリュームが大きいときは、定義に関する規定は最初にまとめ、各条項を有意的・規則的な順番で配置し、場合によっては目次を入れることもあります。
各条項を有意的・規則的な順番で配置は、非常に重要です。裁判所や弁護士は、通常、知りたい事項があるとき「この書類のここら辺に記載があるはず」と予測して探しますので、その通常の予測に則っている意味のある配置・順番であることが重要です。それはまた、会社内で見返すときにも、お目当ての条項に辿り着き易くなります。
些細な点でいえば、表紙にも工夫を凝らします。数千万円を超えるような取引の契約書では、表紙は厚紙にする工夫などが考えられるでしょう。
「しっかりとした会社」という印象は、法務面での会社の信用においてプラスになります。
ご依頼者様が、契約書でも取引先に安心感をもっていただけるよう、当事務所では、ご依頼いただきました契約書を真心込めて作成・納品しております。
(3) 法務部の役割
法務部の役割を考えたとき、語弊を恐れずに申し上げますと、「会社の暴走を止める」ために最善を尽くすことにあります。
新入社員の方々の中には、そのような立ち位置に違和感を覚える方もいるようです。
「会社の利益」のために従業員がいるところ、営業部やマーケティング部などは、日々、会社の「売上」アップのために頑張っています。
その会社に勢いに「ストップをかける」「会社のムードに水をさす」ことが役割のように誤解してしまう、又は周囲に誤解されてしまうこともあるようです。
ここで重要なのは、「会社の利益」って何なのかだと思っています。
「売上」だけではなく、会社の「信用」も「会社の利益」です。
「会社の利益」のためには、会社の「信用」と「売上」の両立が重要なわけです。
法務部は、ストップをかける理屈を考えるのが役割ではありません。
問題を炙り出して、「信用」と「売上」を両立させるための打開策を提案する、又は他部署と連携するのが、法務部の役割だと言えるでしょう。
役割分担は違くても、「会社の利益」のための従業員であることに変わりないです。
(4) 弁護士や行政との対話
「信用」と「売上」を両立させるための連携若しくは打開策といっても、具体的にどうすればいいのか。
例えば、効果を訴求したい商品のパッケージ1つをとっても、いわゆる広告規制の問題があり、微妙な判断に迫られることはあります。
例えば医療広告でいえば、
法律(例えば、景品表示法、医療法)、各種ガイドラインなどでの調査が考えられます。
商品やサービスの標章については商標法、
キャラクターやイラスト・写真については著作権法
などの法律にも注意が必要です。
ガイドラインについては、法の体系を正確に整理した上で読まないと、ミスリードの危険が大きいです。
①ガイドラインの各記載が、法律のどの要件の解釈指針なのか
②その要件は、そもそもどのような場面で問題になるのか
などをミスリードしてご相談にいらっしゃる方が多い印象があります。
例えば、医療広告ガイドラインでは、禁止事項、可能事項、解除要件の各々の関係を理解してガイドラインを読まなければ間違った判断になり得るのですが、それを正しく理解している方は少ないと思います。
ですので、社内完成版のリーガルチェックだけではなく、ガイドライン等の正確な読み方(法の体系の正確な整理)などの指導・助言も、専門家である弁護士にご相談なさるといいかもしれません。
違反する・違反しないの判断は弁護士の助言を受けて会社内部で可能となっても、
具体的表現が違反するか否かの最終的な判断は、行政・裁判所などです。
そこで、行政機関に問い合わせる方法です。
法令の適用関係を問い合わせる制度として、
などがあります。
※省庁ごとに窓口を設けています。上記リンクは一例です。
これらの制度は、従来にない新規事業の立上げなどの場面で活用されることが多いです。
ただし、問合せ内容と回答結果は公になりますので、ご注意ください。
これらの制度の利用方法も簡単ではございませんので、専門家にご依頼なさるのも1つでしょう。
(5) 最後に
法務部としての「会社の利益」への貢献の仕方をご理解いただけたでしょうか?
法務部は、
問題を見落として当該問題が顕在化したら「何をやっているんだ」と怒られ
問題を注意したら、煙たがられ
問題を注意して問題顕在化を阻止しても、表立って「あの時、よく止めてくれた!」と称賛されることは多くない
そんな仕事かもしれません。
その中でも、上記役割を果たすことによって、「会社の利益」に貢献しています。
法的問題を発見できていない ⇒ 三流
法的問題を発見して違法行為を阻止する ⇒ 二流(一人前)
法的問題が発見したら、その問題を打開して「会社の利益」最大化を模索する ⇒ 一流
というイメージです。
一流の法務部員は、気軽に相談できる弁護士や行政との対話の仕方を知っています。
新入社員の皆さま、意識の持ち方次第で、日々の成長、そして数年後の姿は大きく変わると思います。
「会社の利益」に貢献しているという誇りをもって法務の仕事に励んでください。
会社事業が社会に貢献しているのであれば、きっと、それは「社会の利益」にも繋がっているはずです。
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